2014-08-21

Parsons流・授業メソッド①/グラフィックデザイン学科専攻のNIREさん(VIP2013年卒)

もうすぐ私にとってのファイナルセメスターがはじまります。
グラフィックデザインの勉強をはじめてまだ1年(2seme)しか経っていないわけですが、案外焦りはなく、あとは社会に出てたくさん実践していくうちにプロになっていくしかないな、という気持ちになっています。
デザインの大事な基礎は、すでに先生から贈り物として頂いたような、そういう感覚を持っています。これからはその種子に大切に水をやり育てつつ、時間をかけて花を咲かせてくのだと思います。

2セメ目の私の第一の目標はself controlでした。1セメ目で本当にしんどい思いをしたので、「ちゃんと寝る。食べる。締め切りから逆算して優先順位をつけて作っていく」というものです。優先順位を決めるのは本当に大事で、これをしないとどこかで絶対間に合わないことになるので、常に時間配分は考えていました。そして「まあ、そこまでしなくてもいっか」と沸点を超えないようにしていました。当たり前のことなのですが、私はかなりやり過ぎるタイプなので、これが大変だったんです…。先生の意図をよく読み、ここまではやっていく、これ以上は不要だろう、と毎週コンスタントに進めていくことで、そこまでしんどい思いはせずにできるようになりました(ただ1回でもサボると相当大変)。
※ちなみに私の場合1セメ、2セメ目とも1コマだけ授業休んでしまいました。GD1、GD2という週2回ある授業だったので、さして響かず大丈夫でしたが。週1の授業は3回休むとfailすると言われていますが実際はどうなのでしょう…。


2セメ目を振り返ると、本当によく出来たメソッドだったなあと感心する授業がいくつかありました。先生自身がデザイナーとして一番大事にしていることを約15回の授業全てを使って、ステップを踏みながら教えてくれた気がします。
どういう風に授業が進められているのか、具体的に書きたいと思います。


History of Graphic Design
授業の前半1時間半は講義、後半1時間は作品のクリティーク(先生にもよります)。講義系の授業は英語に慣れてからの方がいいかと思い、2セメ目にしました。講義では先生が用意したスライドを見せつつそのデザインのどこがおもしろいか彼独自(本当に独特!)の目線で熱く語ります。毎週リーディングHWがでますが、主たる宿題はプロジェクトについて。

私はこの授業では審美眼が相当養われたと思っています。レクチャーでもプロジェクトでも徹底的に「自分はこのデザインはおもしろいと思う、なぜなら〜」と自分で語ることをさせられたおかげで、視覚的に何がおもしろいかに意識的になれました。良いデザイナーになるには良い鑑賞者にならねばいけません。また世界の中心を自負しているアメリカでHistory of Graphic Designを学ぶのは、日本で学ぶよりずっと世界が広がったと思います。



Project① lectureのポスター /5週間
各自割り当てられたArt movementの中からおもしろいと思うポスターを1枚選び、何がそのデザインをgreatにしているか自分なりに解析。その核心部分を使って、そのArt movementに関する講義のポスターをつくります。
私が割り当てられたのはウィーン分離派。


選んだのは左のポスター。分析するために見るだけじゃ足りないと感じsketch してanalyze。雲の隙間の黒い部分の間隔によって表されている、「前に向かってくる3Dの空間」がこのポスターをgreatたらしめている"核"だと決め創作開始。この核が取り出せるかどうかが勝負。あとはprocessに沿うだけです。

どうシンプルに「前に向かってくる空間」を表せるかを実験しながら進めます。無駄なものは削ぎ落として抽象化を繰り返し、約4週間でできあがり。先生が日本語で作ることをお勧めしてくれたので、こうなりました。この作品でParsons festivalという展示に参加。



Project② シリーズ物 /6週間
各自ランダムに与えられたデザイナーの作品をよく見て、そのデザイナーをgreatたらしめている核を取りだす(ここはProject①とほぼ同じ)。それを使って、何でもいいからシリーズものを作る。ブックカバー、お菓子のパッケージ、ポスターシリーズ等。
私のデザイナーはオランダのPiet Zwart。



1950年代に活躍した彼のデザインはとてもメカニカルなsoundsで、グリットに沿うことでできたリズムがユニーク!この人工的・機械的な雰囲気とあえて一番遠いもののデザインにしようと思い、羊羹のパッケージにすることにしました。
何もない所からこのデザインを作り出すのは難しい。グリットと始めなければと思い、first stepのプロセスを変えてみました。グリットが書いてある紙に、紙を丸や四角にカットし貼っていきます。このプロセス自体が「核」になりました。プロセスを発明できたのは初で、これができると自分のテイストを超えた領域に行き着ける感じがします。
このやり方で試行錯誤繰り返し、4つのフレーバーのパッケージを、自らシルクスクリーンで和紙にプリントしました。
シリーズものは、どういう風に一貫性を持たせるかがkey。色をうまく使えば統一感が出ます。今回はオレンジを統一して、それぞれ+1色。
Piet Zwart感もありつつ、オリジナルなデザインができ、Parsonsのプロセスを重視したデザインが体現できた気がします。






Project③ Event/5週間
自分のhometownで行われるEventの関連品(ポスターやチケットなど)を3つ以上作る。今回は自分で好きなデザイナーを選べます。その人の「核」となる部分使うのは今まで同様。
私は大阪の伝統芸能・文楽のポスターを、しかも人形の顔をmain visualとして使いたいという所からスタートでした。
自分でデザイナーを選ぶとなると逆に迷って大変だったのですが(誰を使うとうまく行くのか決めるのに時間がかかった)、結局Ladislav Sutnarにしました。


Sutnarの写真を使ったデザインは、人の立体感vsグラフィックの平面感がconflictしてるのがおもしろいところ。どういう空間になっているんだ?と「?」が沸きます。

ヒストリーの先生がよく引用していたPaul Randの言葉に"Design is a conflict between form and content"とありました。"conflict"という言葉を使うのがおもしろいなあと印象深いです。
 
結局こういう風になりました。色の部分が舞台空間を表しており、端の白の部分が舞台裏。舞台裏から舞台にでてきた瞬間、人形が生きた役者になる瞬間を表しました。立体感vs平面の不思議さを出せた…変なデザインができあがりました笑。



ラッキーなことにHistoryの先生とはとても相性がよく、彼がどういうものをおもしろいと思うかが理解できるようになりました。やっぱり一番大事なのはいい先生を選ぶことです。クラスを取る時には先生の作品を見てどの人に教わりたいか見定めが必要。ネットで検索して作品を見ましょう!よい先生だと10倍くらい学べます。


余談ですが最後の授業は先生がbook cover design をしているpenguin booksの会議室で行われました。私が勤めてた出版社はモノが多いし人は夜中まで残業しているかんじだったのですが(日本は大体そうだと思う)、penguinは夜7時半にはもう誰もおらず、オフィスも超片付いていて、アメリカのエリート職場環境にカルチャーショックを受けました…。アメリカは非常にlazyな人が多い反面(店のレジ・交通機関・学校の事務・郵便など)、エリート意識が高い人達は自己管理能力が半端なく高いです。Parsonsの教授達もものすごくキチンとした人が多い。メールは即返信、健康管理完璧、家族との時間を大切にしている…など、「こうあるべき」という理性で成り立っているのです(最近読んだ本には「アメリカは単なる戦争や権力ではなく、理性を基礎として築かれた世界で最初の国」とありましたが、まさにそのかんじ)。レジ打ちの人たちとのその差に、この国の問題点?をなんとなく感じたりして…。


長くなったので、一旦切って次のブログで他の授業内容も書きます。