2014-10-04

インターン報告+Parsons授業メソッド②/グラフィックデザイン学科専攻のNIREさん(VIP2013年卒)

また話の途中で更新が遅くなってしまいすいません。
3セメ目がはじまって1カ月ちょい。授業は5コマあって火・水・木の週3です。

そして9月の頭からインターンシップをはじめました。月・金に8時間ずつ。
今は美術館の大規模なExhibitionのカタログ(300ページほどある大きなもの)のレイアウトを6割くらい、けっこうガッツリやらせてもらっています。比較的新しい会社で、6人だけの小さな、そしてネイティブだけの職場ですが、「どう効率的に仕事をするか」をプロジェクトを始める段階でとても考えて、サクサク仕事しているので、それにとっても刺激を受けました。
月曜日の朝にミーティングをして、全員が、優先順位を考えながらこの一週間毎日どのプロジェクトに何時間時間をかけるかを、さっさと決めていくんです。

学校ではやっぱり「おもしろいものをつくる」ことに比重がいってしまいがちなんですが、「生きていくために仕事としてするデザイン」という面は現実であり、そこでは効率・スピード・正確さがもっと大事だということを身に刷り込んでるかんじです。今セメは効率重視です。

オフィスはトライベッカ。ランチはみんなで同じとこからデリバリーして全員で会議室で食べるというフレンドリーな雰囲気です。










本当はインターンは10月とか11月くらいから始めたいと思っていたのですが、8月末にprofessorからintern情報のメールが来て、内容が魅力的だった(+時給も良かった)し、先生からの情報には基本反応しておこうと思っているので、はじめてインターンに応募してみたら、やはり前職で編集をしてたのも大きかったようで採用してもらえました。インターン探しはやっぱり知り合い伝いが一番いい気がします。


ほかにもParsonsAASグラフィックとLVMH(ルイヴィトン等のグループ)の共同プロジェクトというのがあり、Professorの推薦により10人ほど選ばれた生徒が候補者として送り込まれるのですが、それに参加するなど、授業だけじゃない活動みたいなものも増えてきています。先生も最後のセメスターだとわかってくれているのでチャンスをくれようとしてくれていて、サポートが手厚い…ありがたくて感動します。


さて前回の続きでParsonsの授業で「これはよくできたメソッドだったなあ」と思ったものの第二弾を書きます。ちょうど今私がやっているインターンにも役立っているPublication Designの授業です。



Publication Design
雑誌・本のデザイン。授業はクリティークが中心で、皆で机を合わせて自分の作品を見せ合いながらコメントをしていきます。18人もいる大きいクラスですが、同じ素材で同じ内容の本をつくっていてもこうも違うものができるのか…と毎度驚いていました。すごいのは、各プロジェクトが前後のプロジェクトと関連しているところ。1歩ずつ階段を上るかのように組み立てられている授業は、まさにmethodというかんじ。


Project① Photo Narrative /2週間
指定された日曜版のNewYork Timesを買い、そこに使われている写真のみを使い、12ページの小冊子をつくる。文字なし。写真だけで語る練習です。
日曜版NewYork Timesは非常に量が多くて写真も大量。何度も見返し、その中の写真に何か共通のテーマを見つけれるか、冊子としてストーリーを展開させていけるか、なかなか難しい。コピー・着色・コラージュなどしてもOK。


私のテーマは「枠にとどまっていれない人間」。
このプロジェクトは本や雑誌の「ページをめくることで語る」という特性の利点を認識させるのにとても効果的。
写真のチョイスにも個性がでます。






Project② Exhibition Booklet  / 3週間
今度は逆に文字のみの8ページブックレット。記事内容はintroductionと「First Thing first manufesto」という同じタイトルの記事1964年版と2000年版。記事の内容を読み込み、どうレイアウトすると読みやすいか、どういうテンション&語り口調か、語る相手は誰か等考えながらタイポ・色など選んでいきます。まず、よく理解することが大事。

私のアイデアはシンプルで、1964年と2000年版の記事を比べながら読むとおもしろいと思ったので左頁に64年、右頁に00年を並べました。案外こういう解釈をしている人はいなかったです。

実際の仕事の場合、予算を押さえるために2色刷りにすることが多いと聞いたので、その練習を兼ね、色を絞ってみました。






Project③ Magazine  / 5週間
12ページの雑誌。まずは全てのページに共通するグリッドを作るところからはじまります。これもまたイメージは全てProject①で使ったNewYork Timesからのみ使用。Project②の記事も使用。特集記事4ページは「People as Pixcels」という原稿が与えられます。これもやはり内容を読み込みそれにどんなvoiceを持たせるか、雑誌にどんなpersonalityを持たせるかを熟考するところからスタートです。内容をきちんと読み理解することは人の話を聞くことと同じで、その内容にあった姿形を持たせてあげられる。似合う服を着せてあげるのと同じですね。

















ニュースのページ(左下)と特集ページ(右下)の雰囲気を変えつつも、どこかに統一感を持たせねばなりません。タイポフェイス、タイトルの入れ方、文字フレームの入れ方を揃える等、無限のやり方があります。表紙やcontentsのページは特集ページの方に合わせて。



Project④ BOOK / 4週間
18ページの本。内容はProject③の特集記事をそのまま受け継ぎます。つまり2カ月くらいこの原稿と向き合って本を作っていくことになります。本を作り始める段階ですでにある程度自分の中にこのcontentsを消化しているので、どういう姿を与えるか、しっかり考えることが出来ます。「People as Pixcels」という現代社会のアイデンティティの喪失に関する内容だったのですが、私はAKB48をvisual themeに使い(テーマに合ってると思ったので)、CD的な装丁の本をつくりました。こんな変なの作っている人はいなかったので好評でした笑。



同じコンテンツやマテリアルと長期間かけて付き合ったこの授業で学んだのは、個性というのは実はoutputよりinput時に発動するのだということです。そしてデザインすることとは「どのように内容を理解するか・物事を受け止めるか」に全てがかかっているということ。内容に寄り添うことからしか進めないこと。咀嚼して自分の中に取り入れないことにはよいoutputはできないということ。
クリエイティブな人はものを作るのが上手な人というより、理解の深い人・おもしろい受け取り方をする人、受信能力の高い人、アンテナの本数が多い人、だということ。


これは結構おもしろい発見で、やっぱりみんな作るものは似てくるけど、それは創作のクセなんじゃなくて思考のクセなんですよね。inputしたものは頭の中ですぐに何か自分の中にある思考の断片と結びつきたがる、その癖がその人のクリエイティビティなんだなあと。だから色んなものの見方ができるようになると良いな。



もうNYに来て1年4カ月経って、Parsonsもあと3カ月で終わります。その間に日本では25人くらいの友達が結婚して10人くらいの友達が親になりました。
海外にいると日本にいるはずの時間が空白になっているわけで、でも日本との繋がりもはっきりあって、二重の時間軸を生きているような不思議な気がします。村上春樹の「向こう側」と「こっち側」みたいな。NYに来てなかった場合に生きていたはずの時間はいまもどこかに残像としてある。

最近はNYの生活が日常になってしまい特別感もなくなって忙しいことに文句を言いたくなったり日本に帰ってゆっくりしたい(できるはずないけど)と思ったりする瞬間もあるんですが、週に2・3回は今ここにいるありがたさを心底実感して、40年後くらいに訪れてもこの街は変わっていなくて、今のこの時間のことを思い出すんだろうなあと、思います。一瞬一瞬を生きねば。NYの秋は美しいです。